能登半島地震で大火に見舞われた「輪島朝市」(石川県輪島市河井町)の捜索現場に、29年前、阪神淡路大震災の火災で救助にあたった消防隊員の姿があった。
神戸市消防局本部特殊災害隊長の高村浩二さん(56)。1月17日、東京、神奈川、兵庫の3県から派遣された緊急消防援助隊約160人の一人として捜索にあたった。
この一帯では約5万800平方メートル、建物は約300棟が焼損したと推定され、少なくとも10人の遺体が見つかっている。
1995年1月17日早朝、26歳だった高村さんは勤務していた須磨消防署(神戸市須磨区)で大きな揺れに襲われた。
外に飛び出すと、多くの家が崩れていた。助けを求める声を聞き、救助を始めた。夜には長田区から燃え広がった火災の消火活動に加わった。
だが、家がつぶれ、一目で「手に負えない」とわかり、家族と思われる人に「ごめんなさい」と伝えて離れざるを得ない現場がいくつもあった。「悔しさを押し殺すように『わかりました』と言われた。後ろ髪を引かれる気持ちでした」
「あのとき助けた命も、助けられなかった命もある。でも助けられなかった命の方が心の中ですごく大きくて。その悔しさがこの仕事を続ける原点でもあります」
高村さんら兵庫県の消防隊員45人は活動初日の17日、石川県能登町にある拠点で二つの震災の犠牲者に黙禱(もくとう)を捧げた。
輪島へ向かう道中、崩れた山や家を見ると、29年前の緊迫した思いがよみがえってきた。
目の当たりにした輪島の現場は、家屋が燃え尽き、一面の焼け野原だった。「あのときの神戸と同じだ」。どこからどこまでが安否不明者の家なのかも判別が難しく、ドローンで重点的に捜索する場所を確認しながら、隊員を指揮した。「一刻も早く見つけて、家族の元へ帰してあげたい」
高村さんらは19日まで救助活動を続けた。「全国から神戸を助けてもらったように、一人でも多く助けていきたい」(黒田陸離)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル